武蔵野大学が2026年春に「大学院ウェルビーイング研究科」を開設 “令和の松下村塾”目指し、幸せの力で社会問題解決に繋げる
- 2025/8/30
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「世界の幸せをカタチにする。」を教育理念に掲げる武蔵野大学が、2026年4月に「大学院ウェルビーイング研究科」を開設することになり、8月29日に同大・有明キャンパスにて記者発表会が開催された。世界が不確実性の高い時代に進む中、世の中にある諸問題を解決する概念として注目されるウェルビーイングにおいて先進的な教育を行う武蔵野大学。小西聖子学長らが出席した発表会では、新研究科が志すビジョンとカリキュラムが紹介されたほか、AI研究の第一人者を招いたトークセッションも行われた。
武蔵野大学がウェルビーイング研究科を開設
「身体・精神・社会といったあらゆる面において良好な状態、すなわち幸福であること」を指すウェルビーイングの概念。多様性への理解が深まり、一人ひとりの幸せの尊重が求められる時代において、その考えは広く世間に浸透しつつある。そんな中、武蔵野大学では2024年に世界初のウェルビーイング学部を開設しており、さらなる研究・教育の場として来年から「大学院ウェルビーイング研究科」を設けることになった。
発表会の冒頭では同大の学長で心理学者の小西聖子教授が挨拶。

戦争や飢餓が世界から消えず、また、国内においても犯罪被害や災害が絶えない今の社会の危機について前置きした同氏は、「ウェルビーイングを掲げることは、大学として強いメッセージを発することになると思う」と述べ、新研究科創設の意義を説明。その上で「新しい研究科は学生だけでなく、社会人の全ての方にも開かれています。製造業でも金融業でもサービス業でも農業でも、どの分野であっても、自分の仕事が人のウェルビーイングにどう繋がるかを問い直すことができる場になると思います」と本研究家がリスキリングの場でもあることを強調しつつ、「皆さまとともにウェルビーイングのあふれる社会を築いていきたい」と話した。
多様な背景を持つ研究者・実務家が教員陣に集結
続いてウェルビーイング研究科の研究所長に就任予定の前野隆司教授が登壇。長年にわたって幸せに関する研究を行い、ウェルビーイング学会の代表理事を務める同氏が新研究科のカリキュラムを発表した。

「ウェルビーイングに関する総合的・体系的な専門知識と実践力を備え、イノベーティブに課題を解決して幸せな人類と地球の未来を創造する企業人、自治体職員、起業家などの高度職業人材の養成」を目的とする新研究科は、博士課程20名、博士後期課程5名を定員とし、修士課程では「知る(科学的ウェルビーイング)」「突き詰める(哲学的ウェルビーイング)」「感じる(感性的ウェルビーイング)」「つくる(創造的ウェルビーイング)」の4つを柱とした教育を提供。ウェルビーイングを分野横断的かつ総合的に学ぶカリキュラムで構成されている。

また、その他の特徴として集団での指導や学び、多様な学び合いを重視するほか、学部生との交流も積極的に行う。そして教員陣には、哲学、医療、金融、自然環境、地域社会など多様な背景を持つウェルビーイング研究者および実務家を招聘。彼らも数名のチームを組んで指導を行い、まさに一つの学問にとらわれない横断的な陣容で新しい学びの場を提供していく。

併せて新研究科が志すビジョンを語った前野教授は、幸せに当てはまる人の法則として「視野の広い人」「利他的な人」「創造性が高い人」「成長する人」の4つを並べ、「みんながもっと大きな視野で世界の生きとし生けるもののことを考えて利他的になって創造性を発揮して良い社会を作っていったら世界の諸問題を解決できると思う」と、混迷極める今の時代にウェルビーイングが求められる理由を解説。また、「ウェルビーイング研究科は、単なる社会人大学院ではなく、世界の諸問題を本当に解決したいと願う高い志を持った人たちが集まる場として、日本におけるウェルビーイング学の最高峰を目指していきたい」と意気込みを披露しつつ、諸課題が噴出している現代社会を「江戸時代の末期に似ている」と幕末になぞらえ、「ここを明治維新が起こるきっかけを作った松下村塾のような場所にしたい」とも述べた。
AIの普及で高等教育機関に求められるものは根本的に変わる
後半は、日本のAI研究の第一人者である日立製作所フェローで株式会社ハピネスプラネットの矢野和男CEOをゲストに招き、小西学長、前野教授との三者で「AI時代に求められる『幸福』を追求する学び~リスキリングとしてのウェルビーイング学~」と題したトークセッションを実施。

始めに「20世紀の学校というのは学問ごと縦割りで細分化が図られていった。そこには効率化という面でメリットもあったが、学びの分断が本質的な問題解決への創造性を妨げてきた側面もある」と述べた矢野氏は、その上で「AIを使って一人の人間が横断的に様々なことを知れるこれからの時代は、学びも細分化からの転換点に来ている」と分析。対して、この意見に同調した小西学長は「細分化された知識の蓄積がAIの中にある時代に、学生たちにどういう風に大人になり、仕事をしていけばいいと伝えるべきか、これからの高等教育機関に求められるものは根本的に変わってくる」と教育者としての実感を語る。一方、前野教授は「人生百年時代と言われる今、大学を卒業する22歳で学びが終わりではなく、途中途中で学び直して、今でいえばAIのような最先端のものを知りながら専門性を磨くことが、仕事の上でも大切なことだ」とリスキリングの重要性を述べるなど、三者それぞれの観点からの意見が交わされた。
まさに「世界の幸せをカタチにする。」という同学の理念を体現する武蔵野大学大学院ウェルビーイング研究科。社会全体を変える大きな変化でなくとも、幸せの力で誰もが住みよい環境を作る役割の存在は、会社や生活地域の中などあらゆるところで求められている。先進的な学びで、新しい自分を描きたいという人はリスキリングの場として入学を検討してみてはいかがだろう。