Z世代の飲食店選びはSNSが主流に! グルメサイト離れと「リアル重視」の実態
- 2025/9/10
- ライフスタイル

食事の場は、日常の一コマでありながら人との関係性を深める特別な体験でもある。そんな飲食店選びの方法が、いま大きく変わりつつある。かつてはグルメサイトや検索サービスを頼りに「評判の良い店」を探すのが一般的だったが、Z世代と呼ばれる若者たちは異なる行動様式を取っている。彼らはSNSを起点に、料理の見た目や店内の雰囲気を直感的に感じ取り、保存し、実際の来店へとつなげているのだ。
Instagramに並ぶ鮮やかな写真やTikTokで流れる数十秒の動画は、レビュー点数や文章では伝わらない「リアルさ」を提供する。Z世代にとっては、こうしたビジュアル情報が飲食店選びの決め手となる。ランキングよりも臨場感、点数よりも共感──それが彼らの選択基準である。こうした背景から、飲食店の情報発信や若者の消費行動を理解するうえで、SNSの影響力を定量的に把握することは不可欠になっている。そこで今回、StorePro(https://store.cloudil.jp/)は、SNSを参考に飲食店を選んだことがある18歳〜28歳の男女(Z世代)を対象に、「Z世代の飲食店選びにおけるSNSの影響力と活用実態」に関する調査を実施した。
Instagramが圧倒、動画媒体もじわり台頭

調査によれば、飲食店を探す際に最も利用されるSNSはInstagramであり、52.2%という圧倒的な支持を集めた。続いてTikTokが15.3%、グルメサイトは9.8%、YouTubeとGoogleマップはいずれも7.3%にとどまっている。従来の検索型サービスよりも、視覚的に雰囲気が伝わるSNSが主流の座を占めていることがわかる。さらに、飲食店を探すタイミングについても興味深い結果が出ている。最も多かったのは「週末や休日の予定を立てるとき」(51.5%)、次いで「友人や家族と食事の約束をしたとき」(44.4%)、「外食する直前・当日」(39.4%)が続いた。つまり、事前にじっくり検討する場面もあれば、直前に素早く決定する場面も多いことがうかがえる。
この二つのデータを重ね合わせると、SNSがZ世代の飲食店選びにおいて「計画段階」と「直前の意思決定」の双方を支える存在であることが見えてくる。Instagramで保存しておいた候補が休日の予定づくりに役立ち、TikTokで偶然見かけた動画が直前の来店につながる。検索して比較するのではなく、日常的に触れているSNSがそのまま判断材料となるのが、Z世代の特徴といえるだろう。
「行きたい店リスト」はSNS内で完結

気になる飲食店の情報を見つけたとき、Z世代がどのように保存しているのかも注目すべき点である。調査では、「Instagramのコレクションに保存する」と答えた人が45.6%と最多であった。次に多いのは「スクリーンショットを保存する」(30.7%)であり、さらに「Googleマップにピンを立てる」(26.7%)と続いた。
ここで浮かび上がるのは、保存から行動までをSNS内で完結させるスタイルである。Instagramのコレクション機能は、友人との会話や週末の予定調整の際にすぐに参照できる便利なツールとして定着している。グルメサイトでブックマークするのではなく、SNSの流れの中で“行きたい店リスト”を作る。これは日常的にSNSを利用する世代ならではの行動である。
「雰囲気が伝わらない」グルメサイトの限界

調査では、グルメサイトを「使わなくなった/見なくなった」と回答した人が全体の約4分の1を占めた。その理由として最も多かったのは「雰囲気が伝わりづらい」(18.0%)であり、次いで「動画やSNSの方がリアルに感じる」(16.8%)、「情報が古く感じる」(16.7%)と続いている。ランキングや点数で評価する従来のスタイルは、若者にとっては“現場感”に欠けると受け止められているようだ。
一方で、SNSを参考にする理由として挙がったのは「お店の雰囲気や店内の様子が伝わるから」(45.7%)、「料理の見た目や量がわかりやすいから」(44.7%)、「実際の体験レビューとして信頼できるから」(28.7%)であった。つまり、視覚を通じて感じられる臨場感や、ユーザーの体験をそのまま追体験できる点が、SNSの支持を集めている要因である。
この二つの結果を重ね合わせると、Z世代の飲食店選びにおいて「情報の鮮度」「リアルな雰囲気」「共感できる体験」が何より重要であることが見えてくる。数字や評価点ではなく、SNSが提供する具体的で感覚的な情報が、彼らにとっての信頼の拠り所となっているのである。
公式 vs インフルエンサー、支持はほぼ互角

飲食店の情報源として、公式SNSとインフルエンサーのSNSのどちらを参考にするかという問いに対しては、「公式SNSを参考にすることが多い」が53.3%、「インフルエンサーを参考にすることが多い」が46.7%と、ほぼ拮抗する結果となった。両者は異なる役割を果たしており、ユーザーは状況に応じて使い分けている様子がうかがえる。
参考にする理由を詳しく見ると、「おすすめメニューの紹介」(50.3%)が最も多く、次いで「限定メニューやキャンペーン情報」(28.8%)、「店内や調理の様子」(27.6%)が続いた。ここには、公式SNSが提供する正確で網羅的な情報への期待と、インフルエンサーが発信する等身大の体験談への共感が交錯している。また、「お客様のリアルな声や体験談」(25.9%)や「料理を食べる様子やリアクション動画」(14.7%)など、体験を共有できる情報も一定の支持を得ている。正確さを重視する場合は公式SNS、臨場感や共感を重視する場合はインフルエンサーと、Z世代は両者の特性を理解したうえでバランスよく活用していると考えられる。
SNSは“検索”から“動機づけ”へ進化

SNSが飲食店選びに果たす役割は、単なる検索や情報収集にとどまらない。調査によれば、SNSで紹介されていた飲食店の動画を友人や知人にシェアした経験が「よくある」(17.3%)、「たまにある」(41.7%)と回答した人は合わせて6割近くにのぼった。SNSは個人の情報源であると同時に、周囲と共有するコミュニケーションの媒介にもなっている。さらに注目すべきは、SNSでシェアされた動画がきっかけで飲食店を訪れた経験である。「よくある」(24.0%)、「たまにある」(49.8%)を合わせると、実に7割以上が来店経験を持つことが明らかになった。視覚的なインパクトと共感性を兼ね備えたSNSコンテンツは、ただの参考情報にとどまらず、実際の行動を引き出す強力な要因となっているのである。
この結果から、SNSはもはや「検索して探すツール」ではなく、「行ってみたい」という衝動を生み出す“動機づけの場”へと進化しているといえる。情報を見て終わるのではなく、誰かとシェアし、実際に足を運ぶ。その循環が、Z世代の飲食体験を大きく変えているのだ。
調査概要:「Z世代の飲食店選びにおけるSNSの影響力と活用実態」に関する調査
【調査期間】2025年8月13日(水)~2025年8月15日(金)
【調査方法】PRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
【調査人数】1,012人
【調査対象】調査回答時にSNSを参考に飲食店を選んだことがある18歳〜28歳の男女(Z世代)と回答したモニター
【調査元】StorePro(https://store.cloudil.jp/)
【モニター提供元】PRIZMAリサーチ
SNS戦略が未来の競争力を左右する
今回の調査は、Z世代の飲食店選びが従来型の検索依存から、SNSを起点とした体験重視型へと明確にシフトしていることを示している。InstagramやTikTokが持つ直感的で視覚的な力は、単なる情報伝達を超え、来店行動や口コミ拡散のトリガーとして機能している。若者にとって「食べたい」「行ってみたい」という衝動は、SNS上での数秒の体験から生まれているのである。
飲食業界にとって、この変化は無視できない。公式アカウントを整備するだけでなく、臨場感あるコンテンツを発信し、インフルエンサーやユーザーと共にストーリーを紡ぐ姿勢が求められる。Z世代が重視するのは、数字や格付けではなく「リアルさ」と「共感」である。SNSが持つ視覚的な力を戦略的に活用できるかどうかが、今後の飲食店の競争力を左右するだろう。