AIとコミュニティの力で詐欺を断つ! 世界1億DLのWhoscallが示す「信頼のイノベーション」とは?
- 2025/10/10
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現代社会において、特殊詐欺やネット詐欺はますます巧妙化し、その被害額は過去最悪を更新し続けている。警察庁の発表によると2024年の特殊詐欺被害額は710億円余りに上り、電話、SMS、SNSなどあらゆるチャネルを悪用した手口が横行している。もはや「自分は大丈夫」という過信は通用せず、誰もが被害者になりうる時代なのだ。
このような状況下で、個人の注意喚起だけでは限界があり、テクノロジーを駆使した対策が不可欠となっている。その最前線を走るのが、世界で1億ダウンロードを超える電話・ネット詐欺対策アプリ「Whoscall」だ。
開発元である台湾のGogolook Co., Ltd.は2024年10月8日、ブランドリニューアル発表会を開催。AIによる詐欺検知の高度化と、ユーザー参加型のコミュニティ構築を柱とした新たな戦略を発表した。本記事では、その発表会の内容を紐解き、進化する詐欺にWhoscallがどう立ち向かうのかを探る。
カフェのWi-Fiから始まった「信頼を守る」という使命

発表会の冒頭、Gogolookの共同創業者兼CEOであるジェフ・クオ氏が登壇し、Whoscall誕生の物語と、進化し続ける詐欺の現状について語った。
「最初の頃は、資金もオフィスもなく、ただ大きな夢とカフェの無料Wi-Fiだけを頼りに始めた」。クオ氏は、地方出身の3人の若者が起業した当時をそう振り返る。スマートフォンが急速に普及する一方で、1本の電話で全てを失う人々を目の当たりにしたことが、彼らを「人々のスマートフォンの安全を守る」という使命へと駆り立てた。

クオ氏は、詐欺の手口が時代と共に進化してきたと指摘する。2011年頃はコンピューターウイルスが中心だった脅威は、ダークウェブでの個人情報売買を経て電話・オンライン詐欺へ、そして現在ではディープフェイクやAIを悪用した詐欺へと変貌を遂げた。2020年にはネット上の脅威の30%だった詐欺は、現在では90%にまで達しているという。
最新のGASA(Global Anti-Scam Alliance)の調査では、日本の被害者の14%が「あまりにも本物に見えた」と回答しており、クオ氏は「まだ騙されたことがないのは、あなた専用の詐欺がまだ現れていないだけだ」と警鐘を鳴らす。
日本の詐欺グループは「詐欺株式会社」と呼ぶべき組織的な構造を持ち、SNSでターゲットを探し、メッセージアプリで関係を構築し、電話で取引を完了させるという、まるでマーケティングのような手法を用いる。特に日本ではX(旧Twitter)やInstagramが詐欺の温床となっており、被害は高齢者だけでなく、Z世代などのデジタルネイティブにまで広がっている。日本の成人の約4人に1人が過去1年で詐欺を経験しているというデータは衝撃的だ。
こうした現状に対し、Whoscallは全世界で1億ダウンロードを突破し、これまでに6億6,000万件の詐欺電話と18億件の詐欺SMSをブロックしてきた実績を持つ。クオ氏は「テクノロジーは人と人を守るために使うべきだ」と語り、今回のリニューアルが「人がつなぐ信頼のイノベーション」という理念に基づき、AI、コミュニティ、そしてより包括的な保護を目指すものであると締めくくった。
新生Whoscallが示す、AIとコミュニティによる詐欺対策の新時代

続いて、Whoscall株式会社 日本事業責任者の阿久津有美氏が、リニューアルの詳細について説明した。
今回のリニューアルの核となるコンセプトは「信頼を通して人々に安心を届けること」である。それを象徴するのが新しいロゴだ。従来の吹き出しの形を継承しつつ、Whoscallの「W」を加え、手を取り合う人々の姿をイメージさせるデザインとなっている。これは「コラボレーション」と「コミュニティ」を象徴し、ユーザー一人ひとりの力を最大化するという意志の表れである。

また、新たに公式キャラクター「Vee」が登場。活気あるコミュニティ(Vibrant Community)を象徴し、2つのVが合わさってW(Whoscall)になるというストーリーを持つこのキャラクターは、特に若い世代とのエンゲージメントを深め、親しみやすいUIで防犯意識を高める役割を担う。

Whoscallの強みは、4つの主要なデータソースに支えられている。
グローバルユーザー報告:世界最大規模のコミュニティから寄せられるリアルタイムの情報。
AI予測技術:2015年から活用してきた機械学習をさらに進化させ、電話番号の挙動だけでなく、SMSコンテンツやURL、さらには画像の危険性まで分析する。
公開データベース:公的機関や企業などのオープンデータ。
法執行機関との連携:各国の警察機関などとの強固なパートナーシップ。
このエコシステムにより、ユーザーは単に警告を受け取るだけでなく、不審な番号を「報告」することでコミュニティに貢献し、その貢献がバッジとして可視化されるゲーミフィケーション要素も導入される。
さらに、ユーザーからの要望に応え、新たに「ファミリープラン(最大5人)」と「デュアルプラン(2人用)」が導入された。これにより、離れて暮らす両親や子供など、大切な家族をまとめて守ることが可能になる。購入者が管理者となり、家族のアカウントを管理できるため、ITに不慣れな高齢者でも安心して利用できるという。また、既存のユーザーは契約を継続する限り、従来の価格で利用できる配慮もなされている。
阿久津氏は「Whoscallはユーザー、政府、企業と連携し、それぞれにとってWin-Winの関係を築いている」と述べ、コミュニティ全体の力で詐欺に立ち向かう未来像を示した。
防犯のプロが語る、巧妙化する詐欺手口と「ダブルチェック」の重要性

最後に、特別ゲストとして防犯アドバイザー・犯罪予知アナリストの京師美佳氏が登壇し、専門家の視点から最新の詐欺手口と対策について語った。
京師氏は、今回のリニューアルで特に「ファミリープラン」と、今後搭載予定の「音声アラート機能」に注目したという。「高齢の親は『もったいない』と有料アプリの利用をためらいがち。ファミリープランなら家族がプレゼントしやすく、離れていても見守ることができる」と、その有効性を高く評価した。


また、京師氏が最も警戒しているのが、AIを悪用した「ディープフェイク詐欺」だ。子供や孫になりすましてビデオ通話で「オレオレ詐欺」を仕掛けてくる手口で、わずか3秒の音声や映像データがあれば、本物と見分けがつかないレベルで偽装できるという。
こうした巧妙な詐欺への対策として、京師氏はアナログとデジタルの「ダブルチェック」を推奨する。
アナログ対策:家族間で「合言葉」を決めておく。定期的にコミュニケーションを取り、声の調子など些細な変化に気づける関係を築く。
デジタル対策:Whoscallのようなアプリを導入し、不審な電話やSMSを入り口でブロックする。
また、詐欺の実行前には資産状況などを探る「アポ電(予兆電話)」がかかってくることが多い。知らない番号には出ないことを徹底し、Whoscallで発信元を識別することが被害の未然防止に繋がると強調した。
誰もが社会を守る一員に。「信頼」でつながるセーフティネット
詐欺の手口は、AI技術を悪用することで「あなた専用」にパーソナライズされ、誰もが見破ることが困難なレベルにまで進化している。このような脅威に対し、個人の力だけで立ち向かうのはもはや不可能だ。
Whoscallのブランドリニューアルは、単なるアプリの機能強化にとどまらない。それは、最先端のAI技術と、ユーザー同士が支え合う「コミュニティ」という人の力を融合させ、社会全体で詐欺に立ち向かうという新しい防衛の形を提示している。
私たちがWhoscallを使い、不審な情報を一つ「報告」する。その小さな行動が、データベースを強化し、他の誰かを詐欺の魔の手から救うことに繋がる。まさに「人がつなぐ信頼のイノベーション」である。このアプリを導入することは、自分と家族を守る盾であると同時に、社会全体のセーフティネットを編む一員となる、最初の一歩なのかもしれない。