NFTの将来性はいかに!?今、話題のNFTに迫る!

NFTはブームなのか!? アトノイ代表取締役の川本氏が考えるNFTの本質とは

ブロードバンド黎明期の頃からインターネット事業を生業とし、トークンエコノミーエバンジェリストとしても長きに渡り活躍してきた株式会社アトノイ代表取締役の川本栄介氏。今回、川本氏が携わるNFTビジネスについて、NFTの現在のトレンドを交えながら、トークンエコノミストの川本氏はNFTをどう捉えているのか、その本質についてお話を伺ってみたい。

川本氏が考えるNFTとは何か

ブロックチェーンには情報の真正性という正しさを証明する仕組みがベースにある。情報の内容が本当か嘘かではなく、記録した情報を改ざんすることができない、公正で常に第三者が見ることができるという点で、情報の正しさを保証できる世界がブロックチェーンであると、川本氏はいう。

そうしたブロックチェーンの中で成り立つひとつの仕組みとしてNFT(Non-Fungible Token)があるが、川本氏はその真正性をうまく使ってNFTで何をどう表現するのかを常に考えているという。

いつも川本氏はお客さんに対して「(コンテンツを)NFTにして何を証明したいですか?」という質問をするそうだ。

要は何を目的にNFT化するかだ。著作権の証明なのか、所持していることで何かをするのか、誰かとつながるためなのか。そこを考えることが大事だという。

ブロックチェーンというのは冒頭で述べたように、公正に情報が見える化されていて、正しいことを証明できるため、それを利用して「NFTを作りました」という出自を証明できる。誰がそのNFTを発行したのかがわかるのだ。次に、そのNFTを誰かに渡すと、今度は来歴が証明できる。誰から誰にNFTが移動していったかということがブロックチェーン上に記録されて、改ざんが不可能な環境ですべて見える化されていくという。

それにより、NFTの発行者がわかる、誰と誰がつながってNFTが欲しい人にどう渡っていったのかがわかる。こうした来歴が見える化されることで、川本氏はNFTの本当の価値が決まってくるのだと語った。

昔の話で例えるなら、とある茶器が織田信長から豊臣秀吉の手に渡り、最後に徳川家康が譲り受けたという来歴から、その茶器には国宝級の価値が生まれる、ということと同じだという。しかし、茶器の話は口伝によるものだ。言葉を信用することでしか証明できない。

NFTであれば、しっかりとブロックチェーン上で来歴を証明できるのである。

昨今のNFTブームとは異なる世界がある

NFTが証明する来歴の世界は、昨今ブームのNFT化のように、NFTと付けたら高く売れるのではないかという期待値や、もしくは世界にひとつしかないというようなレアリティだけで価値が付いているというようなこととは異なるのだ。

そのNFTを最初に誰が作ったのかということ、本当の価値をわかっている人がそれを持つこと、それが誰から誰に手渡ったかといったことなど、そうした流れこそが価値決定のプロセスになり、本当の価値になる。NFTは、それを証明することができるものになる。新しい価値決定のプロセスを証明できる仕組みになるのではないかという。

NFTは、移転させることでつながりを広げていくようなことにも利用できる。100人のファンにNFTを配りたいなら100個のNFTを作って、無料でもいいから配ったりすることで、そのNFTを持っている人たちがどれぐらいの思いでそれを手に入れたのか、また自分のファンも見えてくる。さらには、どれぐらいの期間そのNFTを保持していてくれたのかなど、作り手はNFTを使って様々なことを見える化することができるのだ。

そうしたつながりが見える化できれば、NFTを最初に作った人は、NFTを持ってくれている人たちに何かおもてなしをすることができる。また、それにより自分のことを一番宣伝してくれたのは誰か、自分のよさを伝播してくれるファンは誰か、長く作品を愛してくれている人は誰なのか、そういうことがわかる手段、ツールとしても利用できる。

むしろ、NFTはそうした手段でありツールだと川本氏は断言する。

NFTは手段であり、ツールである

NFTによる作品に関するトレース環境は、自分のファンは誰なのか、ファンの思いやつながりなどの状況が把握できるなど、いうなれば自分の経済圏を持つようなものであり、NFTを中心にして自然にコミュニティが生まれてくるものであるという。

NFTの発行者は、自分の作品に興味を持ってくれている人が把握できれば、次に作品を出す際には、最初の作品を大事にしてくれている人たちに優先的に手渡すようなこともできる。

自身の作品の経済圏が見える化されているので、発行者自身が様々なことを判断できるのだ。これまでのように作品をギャラリーに出して、たぶん以前も売れたので今回も売れそうだというようなふんわりとした情報ではなく、確実に自分のNFTに興味を持ってくれている人たちに対して、情報発信ができる。自身の作品を欲している人に対して、作品作りをすることもできるのだという。

NFTは高値で取引されていることや、作品のレアリティを証明できるから価値があるということも確かに一理あるが、そこに一喜一憂するのではなく、NFTの本質は次につなげることが大切なのだとも川本氏はいう。

トレンドに乗って現状のNFTは高値で取引されているものもあるが、まったく売れていないものもある。NFTはブロックチェーンによって所有権を証明できるが、実際にはNFTもデジタル作品なので、コピーすることは容易である。ブロックチェーン上にあるということは誰でも見ることができるのだ。

大事なのは、コピーされるか、されないかではなく、それを作ったのは誰かを証明できることに価値がある。誰が作ったものかが証明できるからこそ、買い手も買う価値がある。この関係性を広げていくことこそが、NFTの本質であるという。

NFTは物の売り方を変える

また、川本氏はNFTによって物の売り方を変えることができるのではないか語る。

NFTは出自を証明できることから、著作者は自分の作品をNFT化することで、たとえそれが盗作されたり、勝手に作品を使って二次創作されたりしても、ブロックチェーンにて自分の作品であることが証明できるため、訴えることができる安心感がある。

自分の作品の出自と来歴が証明できれば、コンテンツビジネスは最初に売るのではなく、先に無料で見せたり配ったりすることも可能になるという。

NFTとして多くの人に作品を配った後、作品に共感してくれた人や共感という強い思いに対して、今度はお金に換えられるようなアクションを起こしていくこともできるのではないかというのだ。

そうした経済圏の広げ方は、NFTが広がることで作家の社会的地位と名声が大きくなる上、作家についているパトロンやスポンサーがわかり、購入者がどれだけいるのかといった人気なども、すべてブロックチェーンによって明確になるため、みんなが作家や作品に対して安心して接することができる状況が生まれるのだという。これまでのように本当に作品が流行っているのかがわからないものや、バックに怪しい人が付いているようなこともなくなるという、すべて事実ベースで動く世界が構築できるというのだ。

また、それによって構築されるブロックチェーンの世界は、スマートコントラクトやNFTによって二次創作、三次創作の関係性も明確化されることになる。

これまで作品の二次創作、三次創作は、ライセンス契約されたもの以外は著作者の好意で許可されたもの、あるいは黙認されたものが多かった。二次創作、三次創作が許可され黙認されるのは、作品自体のファン層を拡大させることもあれば、元の作品自体の価値も高めるといった相乗効果を生むからだ。しかし、これまではそうしたファン層の拡大や創作物を把握することは、著作者にとっては難しかった。

これら二次創作、三次創作についてもブロックチェーンによって管理することができれば、作者と直接ライセンス契約を交わすことなく自動的に契約を結ぶことができ、公認が可能になる。また暗号資産(仮想通貨)を併用することで、二次創作者や三次創作者は一次創作の作者に対して売り上げの一部を還元することができるのだ。従来であれば、互いの銀行口座の情報を交換し、契約するために個人情報のやり取りをする必要があったが、そういったものも不要なのだ。こうしたマーケットの新しい概念が誕生することで、サービス設計の仕方も変わるだろうと川本氏はいう。出版社等第三者を介さずに作者と二次創作者やファンを直接つなぐこともできるこれらの仕組みを応用することで、一次作品を無料で配布したとしても、ファン層が拡大することで、二次創作だけでも経済的に潤う可能性にも期待できるという。コンテンツも、NFTによってコンピュータープログラムのように好きに使ってくれというオープンソース化の可能性が見えてきたというのだ。

NFTの将来はみんなの意識にかかっている

NFTによって展開されるこうした将来像をマーケットの新しい概念とした川本氏だが、それを実現するためには、まだまだ時間がかかるだろうと分析をしている。今までの経済的な商習慣をいきなり変えるというのは難しいことなので、実現をさせるためには社会全体のみんなの意識も変えていかないといけないという。

最初から「作品をどうぞどうぞ好きにしてください」とは、なかなかいえることではない。だからこそ、知ってもらいたいのは、そういうことが証明できる仕組みがブロックチェーンの本質であるということだという。それがわかってもらえれば態度変容が起こる可能性があり、こうした仕組みを使って新しいアイデア、新しい設計思想、新しいサービス設計を考えることにチャレンジする人が必ず出てくる。まずはNFTを発行しようということからでもいいから、やってみていただきたいと川本氏は語った。

ブロックチェーン企業のいくつかは、誰でも簡単にNFTが発行できる仕組みを提供するために、すでに様々な開発を行っている。しかし、NFTによるアート作品等が高騰する中では、現状、何でもNFT化すれば儲かるのではないかと考える人も少なくない。

その中で、マーケティングの新しい概念を実現させるためのファーストステップとして、NFTを発行することからやってみるという取り組みは、実際にはかなりの苦労もあるのではないかと、川本氏に尋ねてみた。

「(NFTを)出したら売れるだろう」が先行してしまったため、確かに難しくなっている部分もあると川本氏は答えた。しかし、それは地道にひとつずつしっかりとやっていくしかないだろうという。たとえばだが、この記事自体もとりあえずNFT化をしてみるということもありだと思っているという。

テキストファイルもしくはPDFファイルをNFT化し、まずは川本氏が所持をする。これはタイムスタンプ等も含めてブロックチェーン上に記事が載っていることをあらわす。読みたい人は誰でも読めるが、NFT自体は川本氏が持っているものが初版であることが証明できるのだ。そこでNFTとして欲しい人がいたら、その人に初めて手渡す。誰に渡したのか、そのつながりが記録されていくことが大事なのだと、川本氏はこれまでの解説と同様にそこが重要であると指摘する。そうしたつながりが、この記事に共感してくれた人であることを証明してくれるのだ。

こういうことから始めてみようと、川本氏は相談に来る作家さんや企業に理解いただいている段階だという。それは原稿でもいいし、イベント等に登壇した自分の動画やセミナーで配った資料等でもいい、とにかく自分のものをNFT化していく。NFTを自分で持つことで、自分のものとして証明できることが実感でき、それによって少しずつ頭のスイッチも切り替わっていく。そしてその延長線上に、もしかしたらこういうこともできるのではないかという思考に、少しずつ変わっていくものだと回答した。

具体的なNFTビジネスモデルとは

具体的に誰でもNFTを発行するということができる環境とは、どのようなものが理想的であるのか、そのあたりの考え方についても川本氏に伺った。現状、普通にNFTを発行するとなると、代表的なところでは、イーサリアムブロックチェーンのようなプラットフォームを利用する必要がある。そうなると、暗号資産は必須となる。

イーサリアムにおいては、日本国内でも比較的入手しやすい暗号資産だが、それでも手に入れるためにはまず暗号資産取引所の口座開設が必要だ。他の暗号資産になると、今度は国内の取引所が取り扱っているかどうかも課題となる。

イーサリアムにおいては、その人気から、現在、暗号資産を送金する際の手数料(ガス代という)が高騰しているという課題も抱えている。イーサリアムの手数料は、誰よりも多く支払うことでトランザクション処理が優先されることから、需要が高まっている昨今はかなりの高額になっている。

暗号資産の取り巻く環境は、様々な課題が改善される方向には動いているものの、まだハードルが高いのも事実だ。

基本的にブロックチェーンの機能は、根本となる仕組みはどのブロックチェーンも大差はないといっていいだろう。そうなると手数料の安さと処理速度の速さが重要になってくる。

川本氏が代表取締役を務める株式会社アトノイは、ブロックチェーンにSolana(ソラナ)を採用している。Solanaは元々手数料が安い。現在、多少高くなったとはいえ、コンテンツをNFT化するのに300円程度だという。かつ、NFTの移転手数料は、Solanaでは0.1円程度になる。この金額であれば、NFTをもらった人も簡単に人にプレゼントができる。

ちなみにイーサリアムでは、タイミングによってNFTを発行するのに数千円になってしまう可能性がある。また、移転もほぼ同額の手数料になってしまうことになるという。

また、Solanaであれば手数料が安いため、手数料はサービス側つまりNFT発行体が吸収できるメリットがある。NFTの発行は作家さんないし発行体を売る側が負担をする。またNFTのユーザー間の移転も0.1円とNFTマーケットプレイスなどのサービス側が負担できる程度なので、それもサービス側が吸収してしまうと、NFTを実際に買う人は、Solanaを用意する必要もなくなるという。NFTの購入に暗号資産を用意することなく、レジットカード等これまでの決済を利用した売買が可能なサービスを構築することも可能になるというのだ。これは現時点では非常に重要なことで、初心者が暗号資産取引所に口座を開設したり、暗号資産を購入したりすることなく、NFTの世界に参入できる。こういうことが、最初は最も大事ではないかと川本氏は力説する。

まず、手数料はどうしても発生するので、最初は発行者やサービス側が負担できるようなブロックチェーンを選ぶことでユーザビリティを上げる。続いて、クレジットカード会社など決済代行のようなところが決済を簡単に代行してもらい、誰でも簡単にNFTが購入できる状況を作る。最終的には、決済代行会社を使わずにすべて暗号資産で決済をして直接自分のウォレットを持って、NFTも含めてすべて一元管理をする。そういう手順を踏まないと、なかなかNFTは一般化しないのではないかということである。

NFTによって変わる概念

NFTによって所有の概念も変わってくるだろうと川本氏はいう。リアルなアートなども含めて、NFTによって所有権を分割することができるのだ。例えば高額なアート作品の所有権を分割所有するという考え方だ。

とある場所にアートを飾るために、みんなで高額なアートを購入して、NFTとして所有権をそれぞれ分割して持ち合うという方法だ。

このアートの所有権を自分は何分の一かを持っているということも、NFTによって証明することが可能になる。似たような概念としては、競馬の一口馬主のようなものに近いのではないか。アート自体はとある場所に飾られているが、そのアートの何分の一かの所有権は、自分が持っていることを主張できる。

また、NFTとファッションなどその他の商品とセットで扱うようなことも新しいマーケットの概念としてやってみたいと川本氏は語る。そうした商品は必ずNFTとセットで移転させないと価値が半減するといった概念だという。

それは、実際の古着屋さんなどではよくある、古着のタグを切り取ってしまうとブランド価値が下がってしまうことに似ている。

NFTがセットで発行された商品は、必ずNFTを一緒にして売買しないと公認しないし、価値が下がるというマーケットの考え方だ。そうした概念を中古市場も理解した上で売買することによって、新しいマーケットの価値形成が生まれるのだ。こうしたことが、もしできたならNFTはまた次のステップに進めるのではないかと川本氏はいう。

NFTが日々高額でやり取りされている現状のNFTのあり方は、NFTを世に認知させることには成功したが、ブロックチェーンやNFTの本質を考えると、残念ながら川本氏がいう新しいマーケットの概念とは乖離した世界になってしまっている。これが、本当に今後も持続可能なマーケットなのかは不明だが、少なくともNFT初心者にとっては参入しにくい世界になってしまっているのは間違いない。

川本氏は長きに渡りトークンエコノミーのエバンジェリストとして活躍されてきた、トークンエコノミストでもある。時代が何にフォーカスしているかによって、そのトレンドが決定する。今、NFTがトレンドとして世の中で話題になっているが、今後はユーティリティートークンの時代になるかもしれないし、セキュリティートークンが来るかもしれない、もしかしたらガバナンストークンがトレンドになるかもしれない。それは誰にもわからないと川本氏はいう。しかし、それらは単体で動くものではなく、トークンエコノミーの世界の中では相互補完をしながら有機的に組み合わせながら、権利をしっかりと個人に帰属させていくためのロジック・技術・概念となることが本質的なゴールだという。

こうしたゴールがアート業界しかり、音楽業界しかり、ゲーム業界やSDGsのような分野しかり、各業界がなんとなく見えてきた段階で、サービス設計としてトークンエコノミーが手段として発揮できる時代になる。NFTもその手段のひとつに過ぎないと川本氏は考えている。それには、まだまだ技術力も足りないし、もっと様々なコントラクトも必要だし、明確にゴールが見えて、そこに向かっていくそれぞれの意識も重要になるが、まだすべてが見えている業界や業界人が少ないのではないかとも指摘する。

今回は、NFTを中心に話を伺ったが、NFTはあくまでも手段のひとつであり、トレンドがどのようなものになっても、ブロックチェーンや暗号資産の本質は、川本氏の背景にあるトークンエコノミーの世界と決して無縁の世界ではないことが理解できた。そうした本質が、そのトレンドにはあるのかどうかを見極めることで、今、進行しているトレンドが本当のゴールへと導かれていくのではないだろうか。(聞き手・文 髙橋ピョン太)

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