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AI時代、オフィスは「効率」から「共創」の場へ 1,000人調査で見えた創造性を高める“人間ならでは”のコミュニケーション

生成AIの急速な普及により、私たちの働き方は大きな転換期を迎えている。定型業務の自動化や効率化が進む一方で、浮き彫りになってきたのが「人間ならではの価値」とは何か、という問いだ。AIが作業を肩代わりしてくれる今、私たち人間には、より創造的で、感情や文脈を重んじたコミュニケーションが求められているのではないか。また、ハイブリッドワークが定着した現在、物理的なオフィスが果たすべき役割も変化の時を迎えている。単に業務をこなす場所から、イノベーションを生み出すための「場」への進化した。

そこで今回、株式会社アーバンプラン(https://urban-plan.com/)は、20~50代の正社員を対象に、「AI活用とオフィス空間が促す創造的コミュニケーション」に関する調査を実施した。

AIによる「時間の余白」はどう使われるか? 高まる自己研鑽と対話への意欲

はじめに「職場のAI導入状況」について尋ねたところ、約4割が『全ての業務に導入されている(4.3%)』『一部の業務に導入されている(34.8%)』と回答したことから、AI導入が進む企業は全体の約4割であり、半数近くの企業は導入予定もないことがわかった。

どうやら、AI活用を業務効率化の手段として取り入れる一方で、企業によっては体制や必要性の認識に差があるようだ。では、AIの導入によりどれくらい業務が効率化され、時間に余裕が生まれたのだろうか。前の質問で『全ての業務に導入されている』『一部の業務に導入されている』と回答した人に聞いてみた。

「AIの導入によって業務が効率化されたことで、1日に平均してどれくらい時間に余裕が生まれていると感じるか」を尋ねたところ、『30分〜1時間未満(22.1%)』『30分未満(20.6%)』『1〜2時間未満(15.7%)』が上位になった。

この結果から、AI導入によって一定の時間の余裕がうまれたと感じている人が多い一方で、その多くが2時間未満と比較的短い範囲にとどまっていることがわかった。これは、AIが日々の業務の一部をサポートする段階にあることを示しており、全面的な自動化というよりは「小さな効率化の積み重ね」によって時間を生み出している状況と考えられる。

また、2時間以上の余裕を感じる層は少数であることから、現時点ではAIの導入効果が限定的である企業も多いのではないだろうか。業務内容や職種によって効率化の度合いに差が生じている可能性があり、AIの効果をより広く実感するためには、業務プロセスとの適合性や社内での活用レベルを見直すことが求められるといえるだろう。では、AIによる効率化は、職場内の関係性にどのような影響を与えているのだろうか。

「業務効率化によって時間にゆとりが生まれることは、仕事の生産性を高めたり、職場でのコミュニケーションを促進したりすることにつながると思うか」と尋ねたところ、7割以上が『とてもそう思う(14.5%)』『ややそう思う(57.4%)』と肯定的な回答をしており、業務効率化の先に「生産性の向上」や「職場での人との関わり」にいい影響をもたらすという考えが広がっていることがわかった。

AIが業務負担を軽減することで、社員同士の対話や創造的な活動に時間を割けるようになり、結果的にAI活用は「人がより創造的に働くための土台」をつくることに役立っているようだ。

AIはあくまで「発想の種」 革新的なアイデアへの昇華に不可欠な“人との化学反応”

では、具体的にどのような業務でAIが使われているのだろうか。引き続き、前の質問で『全ての業務に導入されている』『一部の業務に導入されている』と回答した人に聞いてみた。

「AIを活用している業務」について尋ねたところ、『資料作成(52.8%)』が最も多く、『データの分析や整理(42.6%)』『メールなどの文章作成(31.7%)』と続いたことから、AIの活用は資料作成やデータ整理、文章作成といった文章処理型の業務が多く、日常的な事務作業や情報整理の効率化に寄与していることがわかった。これらの業務は正確性とスピードが求められる領域であり、AIによる自動化や提案機能の効果を実感しやすい分野といえよう。

AIは現時点で、発想の創出よりも「整える」「まとめる」といったサポートに強みを発揮しており、社員が企画・判断などに関わる業務により多くの時間を割ける環境づくりに貢献していると考えられる。では、AIを活用して生まれた企画やアイデアについて、同僚や上司と会話をすることはあるのだろうか。

「AIを活用して作成したアイデアや企画案について、同僚や上司とブラッシュアップのために会話をすることはあるか」について尋ねたところ、約半数が『頻繁にある(6.1%)』『ときどきある(45.2%)』と回答。AIを活用したアイデアや企画案について、何らかの形で同僚や上司と話し合う機会がある人が一定数存在し、AIを活用したアイデアや企画案を共有・検討する場が一部の職場で日常的にある様子がうかがえる結果となった。もちろん、AIを活用したアイデアや企画案について職場内でどの程度会話しているかは、企業ごとの文化や業務体制によって差があると考えられる。

では、ブラッシュアップの場を持つことでより良いアイデアや新しい発想は浮かんでくるのだろうか。前の質問で『頻繁にある』『ときどきある』と回答した人に、「ブラッシュアップの場を設けることで、実際にアイデアがより良くなったり、新たなアイデアが生まれたりした経験はあるか」について尋ねたところ、下記のような回答結果になった。

『何度もある(46.5%)』
『一度だけある(38.1%)』
『全くない(15.4%)』

アイデアがより良くなったり、新たなアイデアが生まれたりした経験がある人が8割を超えており、ブラッシュアップのための対話の重要性が明確に示された。この結果からAIが生み出す素案はあくまで出発点にすぎず、人の意見交換によって新しい発想へと進化していくことがうかがえた。

求められるのは「偶発的な出会い」 創造性を刺激するオフィス空間の条件

次に、自由に過ごせるオフィススペースについて全員に聞いてみた。「あなたの職場には、デスク以外にどのような『自由に過ごせるオフィススペース』があるか」について尋ねたところ、『自由に過ごせるオフィススペースはない(56.4%)』と回答した人が半数以上を占めたが、『多目的に使えるフリースペースがある(20.8%)』『会話ができるラウンジのような場所がある(18.3%)』『作業に集中するための個別ブースがある(17.3%)』という回答結果も得られた。このことから、オフィス内に多様な働き方を支援する空間が一定程度整備されている様子がうかがえる。

だが目的に応じて使い分けられる環境を整える動きが進んでいる一方で、依然としてすべての企業にこのような環境があるわけではないこともわかった。自由に過ごせるオフィススペースの有無は、社員同士のコミュニケーションやアイデア創出にも影響しうるため、物理的環境の充実は創造的な働き方を支える要素の一つと考えられる。では、それぞれの職場にどのようなユニークな自由に過ごせるオフィススペースがあるのだろうか。

■職場の「自由に過ごせるオフィススペース」とは?
・カフェ付きスペース(30代/男性)
・ランニングマシンが置いてある(30代/男性)
・芝生(40代/女性)
・マッサージ機(50代/男性)
・社員が昼などに休憩できる和室(50代/男性)

各企業の多様な空間が挙げられたが、社員が業務の合間に心身をリフレッシュしたり、気分を切り替えたりできるよう工夫されたものが多く、中には体を動かす設備や自然を感じられる要素を取り入れるなど、休息の質を重視しているものも見られる。

こうした空間づくりは、社員が自分のペースで過ごせる環境を整える試みとして位置づけられており、オフィスの個性や企業文化を反映する要素の一つになっているといえよう。

では、自由に過ごせるオフィススペースをどのように使用しているのだろうか。前の質問で『自由に過ごせるオフィススペースはない』と回答した人以外に聞いてみた。

「『自由に過ごせるオフィススペース』をどのような目的で利用しているか」と尋ねたところ、『気分転換・リフレッシュ(45.2%)』が最も多く、『ランチや軽食(33.9%)』『チームでのミーティング(32.7%)』と続き、自由に過ごせるオフィススペースは主に「気分転換・リフレッシュ」や「ランチ・軽食」など、気分転換や休息の場として活用されていることがわかった。また「チームでのミーティング」といった業務上の使い方も一定数見られ、リラックスと業務の両方を支える柔軟な用途が共存している様子がうかがえる。

これらの結果から、自由に過ごせるオフィススペースは単なる休憩場所にとどまらず、社員同士のコミュニケーションや情報共有を促す場所として機能している可能性があると考えられそうだ。

では、自由に過ごせるオフィススペースは人の発想や関係性にどう作用するのだろうか。最後に「デスク以外の『自由に過ごせるオフィススペース』が活用しやすいものであれば、オフラインコミュニケーションが促進され、アイデア創出のきっかけになると思うか」について尋ねたところ、7割以上が『とてもそう思う(16.1%)』『ややそう思う(59.3%)』と回答し、自由に過ごせるオフィススペースが活用しやすければ、コミュニケーションの促進やアイデア創出につながると感じていることがわかり、空間のあり方は社員の関係性や発想の質に影響を与えると考えられていることがうかがえる結果となった。

物理的な環境が整うことで、自然な会話や情報交換が生まれやすくなり、それが新しい気づきや企画のきっかけになる。つまりオフィス空間は単に業務を行う場ではなく、人が交流し、アイデアを育てる基盤として重要視されつつあるといえるだろう。

<調査概要>
「AI活用とオフィス空間が促す創造的コミュニケーション」に関する調査
調査期間/2025年11月5日(水)~2025年11月6日(木)
調査方法/PRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
調査人数/1,008人
調査対象/調査回答時に20~50代の正社員と回答したモニター
調査元/株式会社アーバンプラン(https://urban-plan.com/)
モニター提供元/PRIZMAリサーチ

AIが「作業」を担い、オフィスが「共創」を育む未来へ

今回の調査で浮き彫りになったのは、AIの進化が逆説的に「人間同士のつながり」の重要性を高めているという事実だ。

AIが業務効率化を担い、そこで生まれた時間とエネルギーを、人間は「創造的な対話」に投資する。そして、オフィスはその投資を最大化するための「プラットフォーム」へと進化する必要がある。単なる作業場ではなく、行けば誰かに会える、話せば何かが生まれる場所へ。

株式会社アーバンプランでは、こうした時代の変化を見据え、AI活用と親和性の高い、コミュニケーション重視のオフィスデザインを提案している。効率化の先にある「創造性」をどう育むか。その答えの一つは、私たちが働く空間のあり方そのものにあるのかもしれない。

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