浅草の街には、いつもどこか“余白”のような時間が流れている。にぎやかな観光地としての顔を持ちながら、ひとたび路地に入れば、歴史や文化の香りが息づく。そんな土地柄と相性が良いのが「ワイン」という嗜みである。お酒としての味わいだけではなく、産地やぶどうの物語、手にした瞬間の香りや時間の過ごし方までも含めて楽しむ飲み物だ。そして、この“楽しみ方”を音楽とともに体験できるイベントが10月27日（月）に開催される。「浅草ワイン倶楽部」である。タイトルこそ控えめだが、その中身は“大人が心地よく酔える夜”そのものだ。場所は浅草九劇と併設のCOFFEE BAR 桟敷。ワインが初めての人から、より深く味わいたい人まで幅広く受け止められる設計となっている。会場に足を運ぶ人それぞれが、自分自身にとっての“ワインの距離感”を自然に見つけられるイベントといえる。

ライブでもセミナーでもない、新しい“味わい型イベント”

本イベントは、単なるライブでもなく、ただのワインセミナーでもない。その中間にありながら、両方の良さを取り込んだ構成が特徴だ。ゲストが好きな飲み物を通じて自身の表現を届ける。参加者は音楽とともに“味わいの背景”を共有する。その瞬間に、提供されるグラス一杯のワイン以上の価値が生まれる。

第一部は浅草九劇で実施され、乾杯のワインからスタート。ワインソムリエ・北原康行氏によるミニ講座では、「ぶどうの種類や特徴」「ワインの選び方」といった初心者でも楽しめる基礎から学ぶことができる。専門的な知識に偏るのではなく、最初の一歩として“ワインとの距離感をつかむ”ことに重きが置かれた内容であり、初めての参加者でも気後れしない構成となっている。

出演アーティストが“声”で引き出すワインの余韻

出演するのは2名。カラオケ世界大会で2度優勝した海蔵亮太さん、そして秋元康プロデュースのユニット「MATSURI」でボーカルリーダーを務める渡辺真さんだ。
海蔵亮太さんは、甲州ワインとの出会いをきっかけにワインの魅力に惹かれた経緯を持つ。誕生日や特別な日の祝杯にワインを選ぶほど、その“品”に魅力を感じているという。一方、渡辺真さんは“お酒を飲むならワイン”と語るワイン派。歌声の持ち味が異なる2人が揃うことで、この夜は“味わいの立体性”がより強まる構図となっている。

二部構成が生む「広く」か「深く」かという選択肢

本イベントは二部構成だ。第一部は“広く味わう時間”と位置づけられる。ワインの知識と音楽が自然に同列に扱われ、誰でも心地よく楽しめる間口の広さがある。

対して第二部は“深く味わう時間”となる「アンコール・セッション」。会場は少人数制のCOFFEE BAR 桟敷へ移り、じっくりとワインのテイスティングを行う。第一部で紹介されたワインを実際にグラスで味わいながら、香り・余韻・合わせる食との関係を確認できる。ここでは音楽が“背景”となり、ワインそのものが中心に置かれる。席を囲む距離感の近さも手伝い、より“対話型の体験”に近づく。

「浅草ワイン倶楽部」開催概要
イベント名：浅草ワイン倶楽部
開催日程：2025年10月27日(月)
当日券：浅草ワイン倶楽部　7,000円（税込）
【アンコール・セッション参加権付き】浅草ワイン倶楽部　21,000円（税込）

＜イベント本編＞
浅草ワイン倶楽部 with 海蔵亮太 & 渡辺真(MATSURI)
16：30開場／17：00開演
会場：浅草九劇（住所：東京都台東区浅草２丁目１６−２ 浅草九倶楽部 ２F）
出演：海蔵亮太、渡辺真(MATSURI)、北原康行（ワインソムリエ）

＜アンコール・セッション＞
浅草ワイン倶楽部～アンコール・セッション～ with 海蔵亮太
19：30開演
会場：COFFEE BAR 桟敷（住所：東京都台東区浅草２丁目１６−２ 浅草九倶楽部 1F）
出演：海蔵亮太、北原康行（ワインソムリエ）
※MATSURI・渡辺真さんは出演しない。
【アンコール・セッション参加権付き】チケット料金：20,000円（税込）
定員：20名

秋の夜長にそっと寄り添う“大人の余白”

秋は感情がゆっくり深まる季節である。夜の始まりがゆるやかで、終わりが名残惜しい。音楽とワインは、その“間合い”を美しく整える。華やかに盛り上がるのではなく、静かに浸っていく方向性に舵を切ったイベント設計は、大人ならではの楽しみ方といえる。

ワインに詳しい人も、これから好きになる人も、同じ空間で“嗜みの入り口”を共有できる夜になるだろう。浅草という土地を選んだ意味も、終わるころには自然と身体になじむはずだ。10月27日の浅草は、豊かな余白を求める人にとって、小さな目的地となる。