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“高校生起業家”のビジネスプランをリアル企業家がガチ審査! 駒場学園高等学校「駒学起業LAB」最終プレゼン大会を開催

駒場学園高等学校(東京都世田谷区)が株式会社TOKYO EDUCATION LABとの協業で行う実践型ビジネスプログラム「駒学起業LAB」の第5期最終プレゼン大会が3月7日に開催された。不動産投資シミュレーションゲームを手がける株式会社メタバンチョーの永山一盛会長がメイン審査員を務めた今回は、仮想の6チーム計13名の生徒が一年かけて磨き上げた事業構想を発表。グランプリには実際の起業に向けた副賞が与えられるとあって、会場は若者たちの真剣な空気に包まれた。

探究型教育に力入れる“駒学”。最優秀チームにはリアルな起業の道!

東京・世田谷区に校舎がある駒場学園高等学校は従来から探究型教育に力を入れ、「駒学起業LAB」のほか、個人研究に取り組む「タンキュウラボ」、株式会社トンボ協力のもと新しい制服のデザインに取り組む「制服向上委員会」、シナリオ作りから生徒自身で舞台を手がける「ショウケース」という計4つの放課後探究プログラムを設置。修学旅行にも探究の精神を取り入れ、人口減少が進む全国の地方を訪れて地域の課題解決に繋がるアイデアを考えるという個性的な学校だ。

そのうち今年で5期目を迎えた「駒学起業LAB」では、株式会社TOKYO EDUCATION LAB協業のもと、同校の1・2年生から参加者を募り、5月から2月まで毎週月曜日の放課後に計17回の授業を実施。『起業教育』『チームづくり/課題発見』『メンタリング』『ニーズ調査』『事業モデル策定』という5つのステップを踏んだ上で、6チーム計13名の生徒がこの日の最終プレゼン大会に臨んだ。

審査員を務めるのは、上場企業の元役員で現在は株式会社メタバンチョーほか3社を経営するメイン審査員の永山一盛氏、そのほか、株式会社番町投資不動産執行役員の植木芳延氏、株式会社IIJグローバルソリューションズ・ビジネス統括本部の田丸博士氏、本プログラムのOGで学生団体Üniring代表の寺井葉南氏と石橋舞優氏、株式会社ネームレス代表取締役の金田隼人氏、そして一年にわたり本プログラムをサポートしてきたTOKYO EDUCATION LAB代表取締役の金井隆行氏の計7名。各チームは「実現可能性」「収益性・成長性」「持続的競合優位性」「社会性」「整合性・一貫性」という5つの観点によって評価され、最優秀チームにはTOKYO EDUCATION LABから「メンタリング、出資の機会」と「同社オフィスの利用権」が与えられる。

審査に先立ち、永山会長は「皆さんのお話を非常に楽しみにしてきました。一緒に良い時間を作っていきましょう」と挨拶。そんな内容的にも景色的にもスタートアップのピッチイベントさながらの雰囲気の中、いよいよ熱いプレゼンバトルが始まった。

海洋ごみを持続可能な形でリサイクル製品化する「エコループ」

1チーム10分以内というルールのもと行われたプレゼンで最初に登壇したのは「AWA」社。彼らは海岸で回収されたプラスチックごみを複数の工場を通してリサイクル製品化する「エコループ」という事業を提案した。

自然が好きという共通点で集まったメンバーは、神奈川県の海で回収された大量のプラスチックごみが再利用されずにただ燃やされていることに衝撃を受け、海の環境問題を解決する循環型ビジネスに着目。「2050年には海に生きる魚の重量よりも海に投棄された海洋プラスチックの重量の方が多くなるといわれる中で、次の世代に海を引き継ぐことは私たち自身の問題」と述べた彼らは、「その当事者意識こそが、大人たちが諦めてきた課題に粘り強く立ち向かう最大のエネルギーになります」と続ける。

その上で彼らは、これまで海岸ごみの再利用を阻害してきた要因に「素材としての圧倒的な質の低さ」「人件費、設備費などの加工コスト」「小回りの利かない既存インフラ」を挙げ、これらの課題をクリアする「エコループ」のビジネスプランを披露。

本事業では海岸ごみの再生で最も不透明な粉砕・洗浄のコストを1キロ300円に固定。また、適材適所のプロを繋ぎ、製造にかかる作業を複数工場で分担することにより一工場にかかる負担を下げ、持続的な生産体制の構築を目指すという。

既にパートナーシップ候補の工場も選定済み。さらにボランティアに協力してもらうことで原材料費をゼロとし、ミルクラン方式(巡回集荷)の輸送を採用することで物流コストを抑えるなど、他の面でも持続可能な仕組み作りが考えられ、安定的な経営に向けた工夫が随所に感じられた。

発表後の質疑応答では、永山会長から「固定加工費を1キロ300円とした場合、神奈川県の海洋ごみをすべて再生するとしたら約5億円の予算が必要になりますが、その集め方は?」という鋭い質問が。また、「このビジネスモデルを具現化するにはボランティアの方々の存在が肝になるので、地域に向けて問題意識の発信をしっかりしていくと良いのでは」と的確なアドバイスも送られた。

行政の発信を若者文脈に翻訳・最適化する「Re:Map」

一方、3社目に登壇した「Re:Map」社は、行政の広報を若者文脈に翻訳・最適化する“東京のZ世代編集部”を標榜したビジネスプランを提案。

「若者の地図に、その街はありますか?」という挑戦的なメインコピーの紹介から始まったプレゼンでは、昭和・平成の時代が自分で必要な情報を探しに行く「検索の時代」であったのに対し、令和の今は知らなかったことが向こうからやってくる「発見の時代」に変わっているという点を強調。その上で「従来の行政の発信は令和のスタイルに合った発信方法がされていないため、若者世代に発見されにくい」と彼らは断言する。

その上で同社は「行政が持っている本物の価値を若者の価値に変える」とし、その例として現代の若者の心に刺さる短編PR動画のサンプルを紹介。メンバーの一人が従来から運営しているYouTubeチャンネルの実績も交え、実現可能性に説得力を持たせた。

質疑応答の場面では田丸氏から「品質管理において属人化を徹底的に排除するということですが、具体的に指示を出すのは誰になるのか?」という質問が飛び、続けて「サンプルの動画が非常に目を引く内容で、私の世代でも手を止めてしまう面白さでした」との褒め言葉もあった。

そのほか、「エアシフト」社は企業に向けた減煙ワークショップの開催、「地域ラボ」社は地域同士が繋がり地方創生を促すSNSサービス、「バイステ」社はオーストラリアと日本の学生をオンラインで繋ぐ探究学習型英会話サービス、「Raw Flow Systems」社はアルゴリズムがない新しいSNSを提案。いずれも社会課題の解決をビジネスモデル化した若者らしい感性が光る案ばかりで、審査員たちも熱い眼差しで話に聞き入っていた。

仲間やメンターとの「対話」を通じて一人一人が成長果たす

プレゼン終了後、審査の時間を挟み、ついに最優秀チームの発表へ。改めてステージに上がった生徒たちの表情に再び緊張の色が滲む。そして司会者の口から「AWA」社の名前が読み上げられると、観衆から大きな拍手が巻き起こった。プレゼンターを務めた永山会長から「最も注目したのは社会性です。もっと整えたい部分はたくさんありますが、それは完全に伸びしろだと思います」と受賞理由を聞かされた上でトロフィーを受け取ったメンバーは、驚きと喜びが入り混じった感慨深げな表情を見せる。

実は当初作ってきた案を一度断念し、新たなプランを組み直す形でこの日に至った彼ら。それぞれ違うクラスに所属しており「授業の回数が限られている中で話し合いの時間を作ることに苦労した」と言うが、一回一回の授業に全力に取り組み、LINEを活用することでコミュニケーションの醸成に努めた。メンバーの一人は「起業というのはとても難しいものだと思っていましたが、起業LABを受けてみて思っていたよりも始めやすいことが分かりました。この経験を今後に繋げていきたいです」と言い、駒学起業LABでの学びが仕事だけではなく将来の様々な場面に繋がりそうな予感を感じさせた。

なお、この日は「Re:Map」社にも当初予定になかった特別賞が授与され、永山会長からメタバンチョーでの動画制作が約束された。

5期目の終わりを迎え、TOKYO EDUCATION LABの金井氏は「今年は今までで最も多い受講生で始まった反面、途中で抜けていく生徒も多く、果たして何人が最後まで辿り着けるか不安でした」と正直な感想を吐露。その上で最後までやり遂げた13名の生徒の頑張りを讃えながら「過去の受講生が活躍してくれているおかげで最近はこの起業LABに入りたくて駒場学園高等学校を選ぶ生徒さんもいると聞くので、今後も引き続き細部にわたってサポートをしていきたいと思っています」と来期への意気込みも述べた。

また、放課後探究プログラム主任の五十嵐佳織教諭も安堵の表情を見せつつ、「一年間の紆余曲折も知っていますし、特に期末テスト終了から今日までの一週間はどのチームも缶詰め状態で今日に向けてがんばってきたのを見ているので、ここまでたどり着けたことに安心しています。このプログラムの中で最も重要な『対話』を重ねる体験を通じ、どの生徒も周囲の幸せを考えたり、他者と認め合うという成長を果たせたと思います」と感想を述べた。

そして最後は永山会長が「今日の結果はあくまでも今日の時点での評価に過ぎません。今日まで仲間とディスカッションを重ね、いろいろ調べてきた中で、既に次にやるべきことを見つけている方もいるのではないでしょうか。何ごとも今日までの時間の上に立って明日以降を一生懸命取り組むことが最大の社会貢献に繋がると私は信じています。お互い作り上げている事業を信じて、今日からまた一緒に頑張っていきましょう」と総評を述べて全体が終了。熱い戦いの後の会場には、一年のプログラムをやり切り、お互いの健闘を認め合う生徒たちと金井氏、五十嵐教諭ら関係者の笑顔が溢れていた。

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