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“手ぶら穴場観光”でオーバーツーリズムの社会課題を解決! 東京・浅草上野エリア「MACHI HOP PROJECT」発足!

手荷物預かりサービスなどを行う旅行系スタートアップ4社が、台東区・上野浅草エリアの一極集中型オーバーツーリズムを未然に防ぐことを目的としたプロジェクト「MACHI HOP PROJECT」を発足。その取組説明会が9月30日に浅草のアンテナショップ&カフェ・ちいきとで行われた。訪日客の多い浅草を中心に、まずは3つの取り組みから始まる本プロジェクト。説明会後は体験ツアーも行われ、彼らが推奨する“手ぶらで穴場スポット観光”を実際に体験してきた。

今まさに深刻化しつつある社会課題の解決に向けてスタートアップ4社の力が結集

一定の場所に観光客が集中し、生活環境の悪化や公共交通の混雑、コインロッカー不足など、地域にさまざまな悪影響を及ぼすオーバーツーリズム問題。近年、各地で社会問題として深刻化しつつある中、江戸の風情を残す町並みでインバウンド(訪日外国人観光客)に人気の浅草でも地元住民のオーバーツーリズムへの関心は高く、この日の説明会に出席した浅草文化観光センターの平林正明所長によると「浅草も局地的に人が集まる場所はあるものの、公共交通が発達していることから現状はオーバーツーリズムに至っていない」というものの、多くの観光地の現状を見れば問題を未然に防ぐための取り組みは必要な状況にある。

そうした社会課題に取り組むため、手荷物当日配送サービスを展開する株式会社Airporter、手荷物預かりサービスを展開するBounce Japan、旅行計画アプリ「Sassy(サッシ―)」を運営する株式会社RelyonTrip、国際交流プラットフォームとインバウンド向けガイドサービスを展開するGRACYは4社共同で「MACHI HOP PROJECT(マチ ホップ プロジェクト)」を発足。それぞれの強みを活かしたサービスを組みあわせることで、オーバーツーリズム問題の防止に寄与する取り組みを進めていく。

MACHI HOP PROJECT発起人 菅原拓実氏

本プロジェクトの具体的取り組みとしてこの日発表されたのは、「①ホテル、商業施設、カフェなど手荷物預かりスポットの拡充」「②『MACHI HOP MAP』の配布など“手ぶら観光”スポット案内による回遊促進」「③手荷物預かりスポットの情報発信・話題化」の3つだ。説明会で挨拶に立った発起人の菅原拓実氏は、「これまで観光地での『手ぶら観光』の啓発活動は、『迷惑をかけないために荷物を減らそう』というネガティブな訴求が中心でしたが、私たちはこれを『荷物がないからこそ自由に歩ける、発見できる』というポジティブな提案に変換していきます」と述べつつ、「小さな組織ならではの機動力でアイデアを即時に形にし、利用者の声を聞きながら日々改善を重ねていきたい」とスタートアップならではの課題解決力をアピールした。

説明会の後は約2時間の体験ツアーを実施。日本在住歴4年のアルチョムさんに旅行者のモデルになってもらい、MACHI HOP PROJECTが推す「手ぶら観光」を体験した。ここからは実際の体験ストーリーを通じて各取り組みの詳細を紹介していこう。

プロジェクトの合言葉は「Explore hidden gems!(隠れた名所を探そう!)」

観光で浅草を訪れ、駅の周辺を少しブラブラしてみたものの、狭い路地も多い街の中を重たい荷物を持って歩くことにちょっと疲れてしまったアルチョムさん。ところが近くのコインロッカーを使おうと思ったものの、キャリーバッグを預けられる大きなロッカーに空きがない…。そこでBounceのアプリで手荷物預かりスポットの「アンテナショップ&カフェ・ちいきと」を見つけ、そちらを頼ることに。

Bounceには浅草エリアで現在20か所以上の手荷物預かりスポット(MACHI HOP POINT)が登録されており、ちいきとの場合1日600円で荷物を預かってくれる。面倒な手続きなくアプリを使って預け入れが完了で、支払いもキャッシュレスでOK。

ここで店員さんから「MACHI HOP MAP」をもらい、台東区の観光スポットを確認。

観光客の一極集中を減らすには、地域に眠る穴場的な観光スポットを知ってもらい、人の流れを分散することも大切。そうした狙いから、QRコードでSassyのアプリと連携するこのマップは、ガイドブックには載らないような穴場スポットが多数掲載されているところが特徴だ。荷物を預けて身軽になったところで、この情報をもとにちいきとを出発!

手ぶら観光で長い徒歩移動も石畳の参道もラクラク

歩くこと20分。最初に訪れたのは「今戸神社」だ。

この神社は縁結びの神様として有名で、新選組の沖田総司が生涯の最後を迎えた歴史的名所としても知られるが、特に外国人観光客にはまだまだ知名度が低い場所である。しかしながら「招き猫発祥の地」として境内に無数の招き猫が見られるところが、神道に詳しくない人にもキャッチ―に映るであろうスポットだ。

本殿にお参りをしながら「僕の故郷のロシアでも日本料理店に行くとこの猫をよく見ます」と興味津々な様子のアルチョムさん。キャリーバッグが一緒だと歩くのが大変な石畳の参道も手ぶらだとラクラク。

同じ神社仏閣でも浅草寺などと比べると静かで、確かな穴場感が感じられた。

荷物を気にするストレスなく超ディープな大衆酒場体験

「次は何かおいしいものが食べたいな」と、再びMACHI HOP MAPを開いて見つけたのは「信濃路 鶯谷店」。路線バスで移動する間も手ぶらの気軽さを感じながら、山手線の鶯谷駅前へ。

鶯谷駅といえば、数年前に高輪ゲートウェイ駅ができるまで山手線で最も利用客が少なかったディープな駅だ。その駅前でさらにディープな大衆酒場の暖簾をくぐるアルチョムさん。

彼の目を通したその空間は、ずばり日本のドラマやアニメで見る「Izakaya」の風情。そして壁を埋め尽くす無数の品書きには若干の異世界感があるはず。

10月中旬から多言語対応のモバイルオーダーが可能になるとのことだが、この日は日本語のメニューを片手に、ちょっと苦闘しながら店員さんに注文完了。

この日は体験ということで、コーラで至福の一杯。周囲の乾杯をまねて、アルチョムさんの顔にも「ぷはぁーー」と笑顔がこぼれる。普通の観光ではなかなかできないディープすぎる大衆酒場体験にご満悦の様子だった。

その後は、ちいきとに戻って荷物を回収。短時間であったが、荷物からの解放で行動の自由度が増し、細かな路地もストレスなく歩けたことに、アルチョムさんから「手ぶらだと行動範囲が広がるし、狭いところも迷惑をかけずに歩けますね」と好感触の感想が聞かれた。

全体を通じて「まずは台東区での社会実装を進め、今後は京都など同様の課題を抱える他都市への展開も視野に入れています。ここで成功モデルを確立し、『手ぶら観光』を新たな観光文化として定着させたい」と将来的な展望を語ってくれた菅原氏。一方で、浅草文化観光センターの平林所長は「若いスタートアップの皆さんが新しい考え方で街の課題解決を図る取り組みに我々としても連携していきたい」とさらなる協力を示唆した。

今まさに注目を集める社会課題を解決しようと動き出したMACHI HOP PROJECT。同じ志を持つ企業が増えるなど、今後の活動が拡大していくことに期待したい。

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