2025年、75歳以上の人口が急増!不足する介護職員の福音となるのはミャンマー?!

少子化問題しか知らない若い層には想像できないかもしれないが、日本ではかつて爆発的に出生数が増えるベビーブームが2度発生した。第1次ベビーブームは1947(昭和22)年から1949(昭和24)年、第2次ベビーブームは1971(昭和46)年から1974(昭和49)年のことだ。この時の出生児は、それぞれ「団塊の世代」「団塊ジュニア」と呼ばれ、第1次には毎年約270万人、第2次には毎年約210万人が生まれたという。2021年の出生数が81万1604人(厚生労働省調べ)だったことを考えると、ベビーブームに生まれた数がとんでもなく多いことがわかるだろう。

ここで注目したいのは、第1次ベビーブームの発生時期。ちょうど75年前の1947年から3年間続く第1次ベビーブームに生まれた団塊の世代は、今から3年後の2025年に全員が75歳以上の後期高齢者になり、日本は大きな問題に直面することになる。それは“介護”。実は要介護者のメインは75歳以上で、その部分の人口が多ければ介護の需要も必然的に増えることに。そして、要介護者の爆発的増加と同等、いやそれ以上に問題視されているのが“介護職員不足”だ。

引用元:令和元年厚生労働省調べ

現状でも20万人不足しているといわれる介護職員だが、2025年には32万人、2040年には69万人が不足すると厚生労働省は予測している。こう書くと、後期高齢者の人数に対して介護職員として働ける若年層の数が絶対的に少ないのだろうと考える人は多いかもしれない。もちろん、それも原因のひとつであることは間違いない。実際、日本では生産年齢人口(労働人口)と呼ばれる15歳から64歳までの働ける人の数が年間60万人ずつ減っているといわれている。だが、理由はそれだけではない。介護職という仕事自体に人気がないのだ。もちろん、介護職に従事している人はたくさんいるし、その仕事にやりがいを感じて日々頑張っている職員もいるだろう。だが残念なことに、嫌々介護をしている職員が大勢いるのもまた事実。実際、筆者の義姉は若年性認知症で毎日デイサービスに通っているが、お迎えに来る介護職員を観察すると、ワゴン車に乗り込むのにも苦労する義姉をいたわりながらアテンドする人もいれば、押し込むように無理やり乗せようとする人も。後者の職員に当たった時には「この人に任せて大丈夫なのかな?」といつも心配になる。結局、赤の他人で手間のかかる要介護者に、愛情をもって接するのが難しいから人気がないのではなかろうか。厚生労働省は「解決策として外国人材を受け入れて」と提案しているが、事態はそんなに甘くない。その理由について、これから解説していこう。

外国人材に避けられる国、日本

外国人材(=外国人労働者)と聞くと、どこの国から来た人たちを思い浮かべるだろうか。ひと昔前なら中国、ちょっと前ならベトナムだろうか。だが円安が急激に進行している2022年現在、これらの国から日本に来て働こうと考える人は激減。日本で働いても一年前と比べると25%も給料が安いし、途上国自体の給料がどんどん上がっていて、日本に行っても仕方がないと思われているのが現実だ。

グラフにある途上国の、とくに高学歴な人材には欧米の英語圏の国が人気なようだ。大学の第三外国語で、つぶしの効かない日本語を勉強するという面倒くさいことをせず、すんなりと理解できる英語でやりとりできる国を選ぶのは当然のこと。それに現場人材(=肉体労働系の人たち)には、韓国、シンガポール、台湾やマレーシアなど行き先はたくさんある。要は給料が高いかどうか、手続きが複雑なのか、いろいろ資格が必要なのかなど、ハードルが高いか低いかによって日本行きが人気かどうか決まるのだが、現状では日本の人気が急速に落ちているのが現実だ。

それに、外食産業や宿泊業、介護といったサービス業・接客業に向かない国民性の国もある。よく例に出されるのが、中国のレストラン。中国旅行でレストランに行って、すごく不機嫌な顔で接客された経験のある人も多いのでは。自分の都合を押し付けたり、主張ばかりするようなサービス精神のない国民性の人たちは、サービス業に向いていない。そして何より怖いのが倫理観の違い。ベトナム人が日本で悪いことばかりすると報道され、社会問題化していたのは記憶に新しい。とにかく、貧しい国では生きるためには悪いことをするのもいとわない国が多いのだ。では、もはや日本には外国人労働者は来ないのか。そして、来るべく2025年は介護職員不足のまま迎えるしかないのか。

世界でただひとつ日本が円高の国、ミャンマー

「不足する介護職員の福音となるのはミャンマー」と語るのは、株式会社スリーイーホールディングス代表取締役 兼 スリーイーグループCEOの北中 彰さん。グループ事業の中のひとつとして、ミャンマーで「ミャンマー・ユニティ」という会社の最高顧問も務めている人物だ。同社はミャンマー国内の送り出し機関において、2019年の総送り出し人数がNo.1となり、同年12月にはミャンマー労働・入国管理・人口統計省のテイン・スェー大臣に表彰された最大手企業である。そんなミャンマー人材調達の専門家である北中さんに、なぜミャンマーが不足する日本の介護職の福音なのかを聞いてみた。

■ミャンマーの現状について教えてください。

「まず最初に誤解を解いておきたいのは、ミャンマーという国の悪い印象です。ご存じのとおり、ミャンマーでは昨年2月に軍事クーデターが発生しました。軍部が市民を多数殺害し、世界中から経済制裁を受けています。NHKの報道などではクーデター当時の動画などが流れるため、今も戦争していると誤解する人が多いかもしれません。しかし、現在市内はいたって平穏です」

■円安で他の途上国は日本を避けていますが、ミャンマーではどうなのでしょうか?

「ミャンマーでは、日本で働きたいという若者が爆発的に増えています。理由はふたつあります。ひとつめは経済制裁を受けている国なので、欧米や日本の企業がどんどん撤退して仕事がなく、失業者があふれているという現状です。そしてもうひとつは、経済制裁で通貨が暴落して貨幣価値が3分の1まで落ち込んだという現実です。他の国から見れば日本は円安ですが、ミャンマーから見ると日本は円高なのです。ミャンマーでの月給は、単純労働の人で大体5,000円くらいですが、日本に働きに来ると30〜40倍になります。つまり、どの国よりも日本で働くことに魅力を感じている国がミャンマーなのです」

■ミャンマーの国民性を教えてください。

「国民の9割が、上座部仏教を信仰する敬虔な仏教徒です。上座部仏教は出家して自身の解脱を目指すことを重視しますが、ミャンマーも例外ではなく、お寺へ修行に行っています。これは現世で徳を積むという考えで、生きているうちによい行いを積み重ねれば、よい来世が訪れると信じています。そのためミャンマー人はとても心が純粋で勤勉、真面目、そして日本並みに犯罪が少ないという特徴があります。なぜ犯罪が少ないか。それは前述のように徳を積まなければいけないので、悪いことをするわけにはいかないのです。とても控えめでおとなしく、シャイで自己主張しないところは、非常に日本人に似ています。当社ではミャンマーで200人以上を雇用していますが、協調性があり、勝手な主張をしてこないため、とても組織づくりがやりやすいですね」

■言葉の問題はどのようにクリアしていますか?

「実は日本語とミャンマー語は、とても似ています。例えば「私はお茶を飲む」という場合、普通の外国語ならば「私は(S)飲む(V)お茶を(O)」となりますが、日本語とミャンマー語はSOVの並びになります。またミャンマー語では日本語の「てにをは」に当たる助詞を使います。そのため、単語さえ覚えればマスターできる日本語は、ミャンマー人にとっては簡単なのです。また音(おん)も似ていて、日本語の発音は難しくないという声もよく耳にします」

■日本語力が高いということは、どのような場面で有利になりますか?

「外国人が日本で何かしらの問題を起こす時、7割方が日本語力のなさが原因とよく言われます。またサービス業や介護、外食、宿泊業では日本語が必須ですが、日本語を習得しやすいミャンマー人は非常に向いています。こうした背景から、私はこれから10年後、日本はミャンマー人だらけになると予想しています」

■ミャンマー・ユニティでは、どのような人材を扱っていますか?

「普通の途上国では、中卒や高卒の人が技能実習や特定技能に行くのが一般的ですが、ミャンマーは全体の57%が大学進学者という特徴があります。この傾向は、やはりクーデターに起因する経済制裁が大きな原因です。もはやミャンマーでは、大学を出ても仕事がないんです。あまりにも国がめちゃくちゃになってしまい、このままミャンマーにいても希望も夢もない。だからミャンマー・ユニティには、何でもいいからとにかく日本に行きたいという若者が殺到しています。大学を卒業したエリートが、肉体労働でもいいから日本に行きたいと言うのです。この状況を目の当たりにし、斡旋する側としても非常に悲しい現実が起こっていると感じています」

引用元:ミャンマー・ユニティ調べ

■日本企業にとって、大学進学者が多いことのメリットは?

「メリットはふたつあります。ひとつは勉強ができる人たちなので、日本語の習得スピードが非常に速いことが挙げられます。そしてふたつめは、信用できる人柄が多いことです。ミャンマーで大学に進学する人はごくわずかですが、そんなエリートである人はとても自覚が高く、分別もあるので、日本に来て悪いことをするような人はほとんどいないんじゃないかと思われます」

■ミャンマー・ユニティには、なぜミャンマー人の介護職候補者が多いのでしょうか?

「日本はおろか、世界中で介護は人気がありません。その一番の理由は下の世話があるから。しかしながら上座部仏教を信仰するミャンマー人にとって、介護という仕事は身体の不自由なご老人の面倒を見る、とても尊い仕事、徳を積むことができる仕事なのです。こうした背景もあって、介護をやりたいという人が多い非常に特殊な国です。ミャンマー人はとても介護職に向いています。優しくて控えめ、すてきな笑顔と自然な振る舞いで大好きなご老人を心からいたわってくれるということで、評判はとてもよいです」

■介護職候補者の内訳と、日本側のニーズを教えてください。

「候補者の約9割が女性で20代がほとんどです。一方、日本側が求めるニーズの98%が女性です。これには理由があります。というのも、80〜90歳以上になると要介護者の9割が女性になるからです。介護の現場では下の世話や入浴補助などもあるため、女性の介護職員が求められています。ただ残念なことに、ミャンマー人を受け入れてくれる介護現場はまだ少なく、当社としてもひと月に受け入れ先を確保できるのは介護を含めた全職種で150人ほどです」

これらの質疑応答の最後に、北中さんは次のように締めくくった。

「これからの日本の介護現場は、ミャンマー人に救われていくことになります」

不幸な軍事クーデターで“ミャンマー=悪”、“ミャンマー=人権蹂躙”と世界中の世論を敵にまわした感のあるミャンマー。だが奇しくも、それをきっかけに日本で介護職に就きたいと希望するミャンマー人が増えたのは、日本にとって確かに福音であるかもしれない。あとはその希望者の受け皿を、日本がどれだけ早く整えられるか。本当の意味での福音となる日の鍵を握っているのは、受け入れ側である日本なのかもしれない。

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